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整理番号 5612   (公開日 2010年11月26日) (カテゴリ バイオテクノロジー
昆虫の性決定機構の解明とその害虫防除法への応用
●内容 この研究室では、昆虫の性決定が細胞レベルで自律的に行われるという点に着目し、カイコの雄と雌の胚子から独立に細胞株を培養し、性決定を細胞単位で行うことのできるシステムを構築した。さらにカイコの性決定機構を詳細に解析し、カイコの性決定遺伝子の同定と、その選択的スプライシング制御機構がショウジョウバエの遺伝子とは異なることを明らかにした。昆虫の性決定機構を解明できれば、昆虫繁殖メカニズムを制御することが可能となり、新しい害虫防除法の確立が期待できる。更に性決定遺伝子を創農薬ターゲットとする新たな防除法の開発も目指している。これらの研究に関心のある企業等との共同研究を希望している。
脊椎動物は単眼、昆虫は複眼と、目の構造が根本的に異なるにも関わらずどちらもPax6とよばれる非常によく保存された遺伝子が重要な働きを担っていることが知られている。昆虫の体節分化を支配するHox遺伝子群のホモログが、脊椎動物においても脊椎その他の分化を支配していることも有名である。昆虫であれ脊椎動物であれ、睾丸は睾丸、卵巣は卵巣として認識されるが、性決定機構は生物種によって大きく異なる。これまで、いくつかの生物の性決定機構が明らかにされてきたが、それらがいかなる進化のプロセスを経て、今に至ったのかはいまなお数多くの不明な点が残されている。
 哺乳類の性決定機構と昆虫のそれには2つの大きな違いがある。一つめは、哺乳類では生殖巣において決定された性情報がテストステロンなどの性ホルモンを介して全身に伝えられるが、昆虫は性ホルモンを持たず、全身を構成する個々の細胞において自律的に性決定が行われる、という点である。野外で半身が雌、半身が雄のクワガタやセミが採取されることがあるのはこのためである。性決定という個体レベルの現象が細胞というシンプルなレベルで理解できるという点で、昆虫は性決定研究にとって優れた研究材料である。
 もう1つの違いは、哺乳類の性がY染色体上のSryと呼ばれる遺伝子の存否に依存して決定されるのに対し、昆虫はSryを持たず実に様々な性決定様式によって性が決まるという点である。例えばショウジョウバエではX染色体の数に依存して性が決まるが、カイコの場合はW染色体を持つ個体が雌になる。ミツバチに見られるように二倍体が雌、半数体が雄へ分化するという倍数性に依存した性決定がなされる場合もあれば、常染色体の対立遺伝子の優劣関係によって性が決まるコガタアカイエカのような例も見られる。ナナフシの仲間には、温度に依存して性が決まるものもある。このように、昆虫は性決定様式の宝庫であり、性決定機構の進化を理解する上で好都合な研究材料でもある。私達はカイコの性決定機構の解析に着手し、カイコの性決定遺伝子dsxを同定すると共に、dsxの選択的スプライシング制御機構がカイコとショウジョウバエとの間で異なることを明らかにすることに成功した。興味深いことに、ショウジョウバエではP因子のスプライシングの抑制に関わる因子がカイコではdsxのスプライシング制御因子として利用されている。一方、カイコがメスになることを決定付けるW染色体上の遺伝子(Fem)の実体についても興味が持たれるところであるが、残念ながらまだ同定されるに至っていない。
このように解明すべき事柄は数多くあり、それらひとつひとつが害虫の安全な駆除方法の確立に役立つものとなるというエキサイティングな研究が繰り広げられている。ぜひ興味をもって我々の研究をサポートいただきたい。
●研究者
准教授 鈴木 雅京
大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻
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上記内容は、各研究者へのインタビューをもとに東京大学 産学協創推進本部で骨子をまとめたものです。
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