スウェーデン福祉社会に学ぶ
石原 俊時大学院経済学研究科 経済専攻
近年、我が国でも少子高齢化、年金、医療、介護など社会福祉の問題をめぐり議論が盛んに繰り広げられている。これらの問題を論ずるにあたって、福祉先進国であるスウェーデンがモデル国家として取り上げられることも多い。その場合、スウェーデンでは、国家のみでなく、様々な自発的団体、地方自治体、企業なども福祉の供給主体として歴史的に大きな役割を果たしてきたのであり、現在、福祉国家の危機が叫ばれる中で、新たな役割を担いつつあることに注目すべきであると思われる。また、スウェーデンの現状は、一朝一夕にして得られたわけではなく歴史上様々な問題に直面し、それらを克服しながら獲得してきたものであり、現在も新たな問題が生じていることを知る必要があるであろう。 このテーマの提案者であり、経済史が専門の石原教授は、スウェーデン福祉国家がどのように形成されてきたのかについて研究を進めてきた。『スウェーデンの高齢者福祉―過去・現在・未来―』(新評論)の訳者でもある。日本でも、今後の福祉のあり方を考える上で、国家に留まらない多様な福祉供給主体とそれらの相互協力関係を視野に収め、さらに進展する社会福祉ニーズの多様化に対応し、民間や個人レベルの自発的参加意識を高めることを考えねばならないと思われる。