バキュロウイルス超発現機構の解明とそれを模倣した新規VLPワクチン製造法の開発
勝間 進大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻
バキュロウイルスを用いた外来遺伝子発現システム(Baculovirus Expression Vector System: BEVS)は、ポリへドリン遺伝子のかわりに有用遺伝子を挿入した組換えウイルスを作成し、昆虫細胞、あるいはカイコ幼虫に感染させることで、昆虫細胞内で外来遺伝子産物を発現させる方法である。この方法は、哺乳類由来のタンパク質発現に適しており、他の発現系で発現しない、あるいは活性が無い場合でもクリアできることが多い。また、産業的にもイヌやネコ用のインターフェロン(獣医薬)の生産が行われている。最近では、BEVSを用いたウイルス粒子様構造体(Virus-Like Particle: VLP)ワクチンの製造が世界の注目を集めており、現存のものより高発現かつ安定なシステムを開発する必要があると考えられる。しかしながら、現時点では、ポリへドリンプロモーターの活性化やポリへドリンの選択的翻訳メカニズムというBEVSの根幹原理すらほとんどわかっておらず、そのため革新的な改良が不可能な状態である。これは、ひとえに、「バキュロウイルスがどのように宿主のタンパク質合成マシナリーを支配し制御しているか」が未解明であるからである。研究室では、このポイントに着目した基礎研究を行い、新規高発現型BEVS、および非ウイルス型発現ベクターの開発を試みている。