ミッシングピースを埋める植物ウイルス耐性機構
カテゴリー
- バイオテクノロジー
- 農林水産・食品
SDGs
研究内容
この研究室では、植物の病害防御を目的として多様な植物ウイルスに共通した感染戦略・病原性発現機構を明らかにすることを目的としている。これまでにシロイヌナズナ野生系統の中から、ユリなどに大きな被害を与え問題となっているポテックスウイルスの一種に強力な抵抗性を示す系統を発見し、JAX1(JACALIN-TYPE LECTINE REQUIRED FOR POTEXVIRUS RESISTANCE1)と名付けた。この遺伝子は、世界最大の果物と呼ばれるジャックフルーツの成分と類似するレクチンの一種であり、これまでにない新しいウイルス抵抗性を示した。
JAX1のウイルス抵抗性を確認するため、JAX1を持たないタバコとJAX1を発現させたタバコにGFP(緑色蛍光タンパク質)を導入した光るウイルスを接種したところ、JAX1遺伝子を持たないタバコはウイルスに感染したが、JAX1遺伝子を発現させたタバコはウイルス感染が起こらなかった(図1)。このことから、JAX1はウイルス感染の初期段階で増殖を抑制することにより、強力な抵抗性を示すことが明らかになった。また、この研究成果では、植物レクチンが植物ウイルスの増殖を阻害するという機能を初めて明らかにした(図2)。
図1 JAX1発現植物におけるウイルス抵抗性
左:JAX1遺伝子を持たないタバコ
右:JAX1遺伝子を発現しているタバコ
いずれも、GFPを導入した光るウイルスをつくり、植物に接種してウイルスに対する抵抗性を調べた。
© 山次 康幸、難波 成任
図2 動物と植物におけるレクチンの機能
動物レクチンは癌細胞増殖抑制・免疫活性化・ウイルス増殖阻害の機能、植物レクチンの一部も動物ウイルスの増殖を阻害することが明らかになっていた。この成果では植物レクチンが植物ウイルスの増殖を阻害するという植物における機能を初めて明らかにした。
© 山次 康幸、難波 成任
想定される応用
JAX1はウイルス抵抗性の低い作物の耐病性向上に寄与できる発見と考えられる。
連携への希望
この成果に関心をもつ自治体や企業と連携する用意がある。
公開日 / 更新日
- 2021年11月19日
識別番号
- No. 00019-01