東京大学産学連携プロポーザル

DNA損傷応答機構を標的としたがん治療

カテゴリー

  • バイオテクノロジー
  • 医学・薬学
  • 基礎科学

SDGs

研究内容

この研究室では、がん等の原因となるDNA損傷に対する細胞の応答機構の解明をふまえた治療医学の確立を目指している。
正常の細胞は、DNA損傷に応答して時間をかけてそれを修復するシステムを有するが、がん細胞においては、この経路のバランスが崩れていることが多い。そのために、DNA損傷が修復されない状況で、細胞は何とか生存するために、本来果たすべき機能に異常を有する細胞が生じることになる(図1)。このような異常細胞の中で、がんの進展に関わる遺伝子異常を有するものが存在すれば、がん治療を行ったとしても、より悪性度の高いがん細胞が作りだされることになり、その後の治療はきわめて困難になる。
そこで、がん細胞におけるDNA損傷応答経路を解析し、がんに特異的に存在する異常が解明されれば、このような経路を標的としたより有効ながん治療が可能となる。例えば、この研究室で同定されたRad54Bというタンパク質は、多くのがんにおいて、正常細胞よりも量が増加しているが、DNA損傷が存在する場合には進行を停止すべき細胞周期を、がんにおいては停止がおこらないようにする作用を有している。そのために、がん細胞は次々に異常な遺伝子を有する細胞へと進展していくことになる(図1)。

「細胞周期における正常とがんの違い」
 正常細胞では、DNA損傷が存在する場合、細胞周期の進行を停止することによって、それを修復するために時間を十分にとることが可能である。ところが、がん細胞では、細胞周期を停止することが難しいために、DNA損傷が存在した状況で、細胞は次の周期に進んでしまう。その結果として遺伝子の異常が固定化され、それががん細胞にとって有利にはたらく場合には、がんは進行することになる。このような正常とがんの大きな違いをもたらしている原因の一つに、がんではRad54Bが多く発現していることが解明されている。
© 宮川 清

想定される応用

もし、このような作用を有するRad54Bを抑える薬の開発に成功すれば、異常細胞が作り出される過程を制御することが可能となるために、新しいがん治療となることが期待されている。

連携への希望

このように、DNA損傷応答研究の成果は、がん治療における分子標的治療や個別化治療への応用という形で、臨床医学に大きな影響を与える可能性を有する。有効な治療法の発展には、研究で得られた科学的知見が臨床の場において正しく活用されることが重要であり、この研究室では情報交換・コンサルテーションなど、創薬・治療法開発を進める企業・団体との連携を希望している。

公開日 / 更新日

  • 2021年12月21日

識別番号

  • No. 00094-01

カテゴリー

  • バイオテクノロジー
  • 医学・薬学
  • 基礎科学

SDGs

公開日 / 更新日

  • 2021年12月21日

識別番号

  • No. 00094-01