PLA2リピドミクスによる脂質の新機能の解明とその創薬・バイオマーカー展開
カテゴリー
- 医学・薬学
SDGs
研究内容
脂質は生体における最大のエネルギー源であり、細胞膜を構成する主要成分であり、シグナル分子としても働く。また脂質は食品から摂取される環境栄養因子であると同時に、適宜代謝を受けて時空間的に生体応答を制御する組織環境調節因子でもある。
本研究室では、脂質ならびにその代謝産物が関与する脂質ネットワークにフォーカスを当て、脂質代謝に関わる酵素(特にホスホリパーゼA2分子群)や受容体の遺伝子改変マウスに脂質の網羅的分析(リピドミクス)を展開することで、多様な疾患の分子病態を解明し、これを基盤に、脂質代謝の変容が関わる疾患の診断・予防・治療に向けた臨床展開を目指している。具体的には、脂質代謝関連の遺伝子改変マウスにおける疾患関連の表現型を精査するとともに、組織・細胞から抽出した脂質をリピドミクス解析して当該疾患における脂質の量的・質的な変動を調べることで、疾患と相関する新規脂質経路を同定する。特定の脂質経路の異常は、代謝疾患・免疫アレルギー疾患・循環器疾患・皮膚疾患・神経疾患・不妊症などの多岐に渡る疾患と密接に関連している。このことから、疾患と結びつく脂質分子やその産生に関わる代謝酵素を標的とした創薬は、疾患の新規治療法やバイオマーカーの開発に結びつくポテンシャルを秘めている。
研究のストラテジーと脂質代謝に関わる酵素PLA2群の遺伝子改変マウスの表現型写真は左から、肥満、脱毛、アレルギー、魚鱗癬、がん、神経変性の表現型を示している。これにリピドミクス解析を応用することで、各疾患と関連する新規脂質経路を同定する。
© 村上 誠
想定される応用
本基礎研究を基盤として、関連する疾患の診断・予防・治療に向けた創薬展開が期待できる。
連携への希望
遺伝子改変マウスを基盤とした基礎研究の成果をヒトにトランスレーションするための臨床研究者との連携、ならびに創薬・バイマーカー探索を進める企業、団体との連携を希望している。
関連情報
関連論文:J Clin Invest 2010, Nat Immunol 2013, Cell Metab 2014, J Exp Med 2013 & 2015, Nat Commun 2017, Nat Med 2017, Cell Rep 2020, J Biol Chem 2020, JCI insight 2022, etc
公開日 / 更新日
- 2021年12月22日
識別番号
- No. 00129-01