東京大学産学連携プロポーザル

生きた生物の神経細胞が伸長する方向を光で誘導する手法の開発

カテゴリー

  • バイオテクノロジー
  • 医学・薬学
  • 基礎科学

SDGs

研究内容

神経系を構成する神経細胞は軸索と呼ばれる突起を伸ばし、互いにつながりあうことで神経回路を形成している。神経回路の形成過程は、複雑な組織の中でいかに軸索を正確な標的細胞へと誘導するかが重要であり、培養神経細胞等を用いてさまざまな分子メカニズムが解明されてきた。しかし生物組織内においては、その複雑な環境下で軸索がいかに伸長するかについて未だ全容が明らかとなっていない。
この研究室では、新規に作製した光応答性分子を用いて、生きた生体内において軸索に光を照射することによって、その伸長方向を制御する手法の開発に成功した。また開発した手法を用いて、光照射に対する成長円錐の応答を詳細に解析することで、周囲に物理的障壁がある場合に成長円錐の可動方向が制限されることを明らかにした。

開発した人工光応答性DCCの原理図.軸索誘導を担うタンパク質DCCと光照射により多量体を形成するCRY2を繋げた。光吸収によりDCCが多量体を形成し、活性化する。活性化した光応答性DCCは光照射領域で軸索の誘引反応を引き起こす。
© 小澤 岳昌

光応答性DCCを導入した神経細胞の光による誘導.ニワトリ由来の神経細胞に光応答性DCCを導入し、培養皿上で培養した。成長円錐上部に5分おきに5秒間光照射を行ったところ、軸索が光照射側へと伸長方向を変更する様子が確認できた。画像右上の数字は光照射開始からの経過(分)を示す。
© 小澤 岳昌

想定される応用

神経回路の形成は、個体内で軸索周囲の環境が刻々と変化する中で厳密に制御されており、神経回路形成における異常はてんかんやハンチントン病といった深刻な精神疾患につながる。そのため、光照射に対する応答によって特定の発生段階で部位特異的に成長円錐の可動方向を解析しうる本手法は、これらの疾患発症のメカニズム解明や、光誘導による病変した神経回路の修復などに寄与することが期待される。また、本研究で確立した一連の方法論は、様々なキナーゼ型細胞膜レセプターに応用可能であり、近年注目の集まっている生命機能を光によって自在に操作する研究全般の発展に貢献することが期待されている。

連携への希望

この技術の実用展開に関心の高い企業等との連携の用意がある。

公開日 / 更新日

  • 2021年12月23日

識別番号

  • No. 00203-01

カテゴリー

  • バイオテクノロジー
  • 医学・薬学
  • 基礎科学

SDGs

公開日 / 更新日

  • 2021年12月23日

識別番号

  • No. 00203-01