マルチスケール熱力学連成解析システムによるセメント改良地盤からの六価クロム溶出影響評価
カテゴリー
- 環境・エネルギー
- 土木・建築
SDGs
研究内容
この研究室では、nmからmmスケールといった微視的な機構に支配される重金属の固液平衡、移動、反応現象と、数mから数十mオーダーの空間的広がりを有する汚染物質拡散現象の両者を直結するために、マルチスケール型モデルの開発と統合システムの構築を行っている。実環境に見られる多様な地盤条件(pHや酸化還元状態、地盤の種類、地下水流など)のもと、セメント固化処理土の長期安定性と六価クロムの溶出挙動について、統一的な枠組みで予測するシミュレーション技術の構築を目指すものである。
現在開発を進めている3次元有限要素法を用いた熱力学連成解析システム(DuCOM)は、節点自由度として温度、間隙水圧、ガス分圧、および様々なイオン種の濃度などを逐次解いていくものである。各自由度の解は、支配方程式である熱エネルギー保存則および水分・気体・イオンなどの質量保存則を満足することが求められる。ここで相互依存性を考慮するにあたって、各々の質量保存則を構成するサブシステム内で個別に解き、十分に微小な時間間隔のもと、各システムで得られる出力値を連成させながら計算を実施していくスキームを採用している。微視的な現象に立脚したセメントの水和進展、空隙構造の形成、クロムの移動・固定化モデルの連成により、実験条件に応じた初期条件と境界条件を入力するのみで、統一的な手法によって溶出挙動が追跡可能となったと言える。この手法を用いてタンクリーチング試験の再現解析を行ったところ、セメント添加量が増加し養生日数が延びるにつれ、水和反応により形成される硬化体構造が緻密にあり、外部への六価クロム溶出量が抑えられることが表現された。
熱力学連成解析スキームの概要
© 東京大学コンクリート研究室
タンクリーチング試験の再現解析結果
© 東京大学コンクリート研究室
中型土槽試験の再現解析結果
© 東京大学コンクリート研究室
大規模解析試行結果
© 東京大学コンクリート研究室
想定される応用
今後、セメント固化土からの六価クロム溶出リスクを評価することに加え、熱力学連成解析システム(DuCOM)と地球化学コード(PHREEQC)を進め、より普遍的なモデルの構築、熱力学モデルを用いた数百m~kmオーダーの空間領域に適用する大規模解析の準備を行う予定である。また六価クロムの外部溶出量を制御するための汚染土壌対策工法に対しても環境影響評価を行っていきたい。
連携への希望
このような研究に興味を持つ企業との連携を希望する。
公開日 / 更新日
- 2021年12月23日
識別番号
- No. 00216-01