SDGs
連携提案
専門分野は比較文学・比較文化。19世紀後半におけるフランス文学と美術の関係、特に自然主義運動の研究を行っている。研究テーマとして教科書と文学作品のイラストレーションに関する研究に取り組んでおり、以下に紹介する。
「芸術は(目に見えるものを)再現するものなのではなく、(私たちの目に)見えるようにしてくれるものなのだ」とスイスの画家、パウル・クレー(1879-1940年)は言っている。音楽や文学にも造詣が深かったクレーは、絵画作品を通じて音や文字による表現だけでは私たちが見逃してしまいがちなものを見事に掬いあげ、私たちに見えるようにしてくれた。
私はさまざまなイメージとテキストの関連を研究しており、挿絵やポスターのような日常生活にあふれているイメージ媒体や、雑誌記事や広告文のような私たちの生活になじみ深いテキスト媒体までひろく扱っている。とくにインターネット時代になってから、視覚媒体と文字媒体はさまざまな形で「共演」をしている。それぞれが単独では表現しきれないことを、この共演のおかげで私たちは理解しているのだと思う。
このような時代だからこそ今あらためて(何かを例示し明らかにする、という意味での)イラストレーションを研究する価値があると考えている。私は今、とくに教科書と文学作品をその研究対象として、イラストレーションがどのような役割を果たしているか、テキストだけでは理解できないことを、どのように効果的に私たちに見えるようにしてくれているかを考察している。出版・教育などのさまざまな業界・分野で、この知見が役立てば幸いである。
外山正一著『正則文部省英語読本』(大日本図書、1889年)
英語教科書に和風の人形と箱
© 寺田寅彦研究室
伊藤健三(他)著『New Horizon』(東京書籍、1971年)
70年代の日本の中学生にはこのカップルはまぶしかったことだろう
© 寺田寅彦研究室