ウイルス療法:新規ながん治療薬の開発~がん細胞のみで増殖する、無毒化単純ヘルペスウイルスの臨床応用~
カテゴリー
- バイオテクノロジー
- 医学・薬学
SDGs
研究内容
先進的ながん治療であるウイルス療法は、増殖型ウイルスを腫瘍細胞に感染させ、ウイルス増殖に伴うウイルスそのものの直接的な殺細胞効果により腫瘍の治癒を図る治療法である。
この研究室では、人のあらゆる細胞に感染するが、正常細胞では増殖できず、がん細胞においてのみ増殖し細胞を破壊する遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)を作製した。
ウイルスゲノムの複数箇所に変異を付与することにより、復帰変異が起こらず、がん細胞だけで増殖して強力ながん細胞破壊能力を有する、安全治療域の広い第三世代型を作製することに成功した。
増殖型遺伝子組換えウイルスを用いた治療としては初めて厚生労働省の承認を得て、平成21年より悪性脳腫瘍患者を対象に臨床試験を行い、平成27年からは第II相の医師主導治験を開始した。令和3年6月、日本初のウイルス療法薬として第三世代型G47Δが悪性神経膠腫を対象として製造販売承認された(条件及び期限付承認)。さらに、前立腺がん、嗅神経芽細胞腫および悪性胸膜中皮腫についても臨床試験を行っている。G47Δは全ての固形がんに有効性が期待されており、速やかな適応拡大が望まれる。
第三世代型を基本骨格として、さまざまな機能を有する遺伝子を発現する機能付加型がん治療用HSV-1を開発する革新的技術を有している。すでにヒトインターロイキン12発現型がん治療用HSV-1(T-hIL12)を開発し、令和2年1月より悪性黒色腫を対象に医師主導治験を開始した。
ウイルス療法の概念
がん細胞だけで増殖できるように工夫された遺伝子組換えHSV-1をがんに感染させると、ウイルス増殖→細胞破壊→感染を繰り返して広い抗がん作用を現す。正常細胞では増殖できないので、正常組織を傷害しない。
© 藤堂 具紀
第三世代のがん治療用ヘルペスウイルス(G47Δ)のDNA構造
G47Δは、γ34.5遺伝子(2コピー)の欠失、ICP6遺伝子の不活化、α47遺伝子の欠失を有する三重変異HSV-1で、がん細胞を選択的に破壊する能力の増強と安全性向上を同時に実現した。
© 藤堂 具紀
連携への希望
すべての固形がんが対象となるこの新規がん治療の臨床開発に共同で取り組む意欲を有する企業からのコンタクトを待つ。
公開日 / 更新日
- 2021年12月01日
識別番号
- No. 00079-01