韓国の教育福祉政策及び実践に学ぶ
李 正連大学院教育学研究科 総合教育科学専攻
近年拡大されつつある貧困による教育格差は、日本教育において最も深刻な危機ともいえる。日本の相対的貧困率はOECD加盟国の中で最下位の水準であり、実際就学援助を必要とする子どもの数は近年激増している。しかし、公教育費は実質的に削減が続いており、長引く不況の影響もあってその改善の見込みはあまり期待できない。 一方、日本以上に教育格差の大きい韓国では、最近貧困児童の教育をサポートするため、2003年から「教育福祉投資優先地域支援事業」を実施し、大きな成果を上げている。同事業は貧困層の子どもたちに教育・文化・福祉が統合されたサービスを提供し、社会格差の解消に寄与することを目標として始まった国家プロジェクトである。すなわち、地域内の教育ネットワークを構築するように奨励する事業として、地域教育共同体の具現を基本戦略とし、学校と地域社会が連携・協力して、地域レベルの教育・文化・福祉の統合サービスネットワークを構築することによって、貧困層の子どもたちの実質的な教育機会を保障しようとするものである。なお、同事業によって地域に学校と自治体、NPO等が連携・協力する関係が構築され、子どものみならず、地域住民全体が暮らしやすい環境がつくられる効果も表れている。このような韓国の経験は、日本教育の今後のあり方を考える上で示唆される点が多い。