天然の浄化作用を利用した小規模酸性河川や抗廃水の浄化に係わる研究
穴澤 活郎大学院新領域創成科学研究科 自然環境学専攻
かつてわが国は有数の鉱山国として知られており、廃鉱山から流出し続ける坑廃水による水質汚濁が各地で環境問題を引き起こしている。それらの多くは責任の所在が不明確であり、何の対策もとられずに放置されている例も少なくない。こうした問題に直面しながらも予算の関係や地元産業への風評被害を恐れるあまり、調査も対策も為し得ずにいる地域が全国には数多く存在する。 本研究室では、浅層地下水や表流水の野外調査を通して、このような酸性河川や抗廃水問題への解決の糸口を探ってきた。例えば、ある山村では蛍(ほたる)の飛翔域が極端に偏在していた。この地域の渓流は清涼であり、通常の水質調査では特に問題は見出されなかった。しかし、河川底質や周辺土壌を含めた調査をしたところ、高濃度の重金属が検出され、上流域には地元の人々にも忘れ去られた廃鉱山が存在した。調査を進めるうちに蛍飛翔域と坑廃水との関係や、当該地域における天然の河川浄化機構を明らかにすることができた。また、この天然の浄化機構を応用した重金属の除去システムを構築することで、坑廃水中の溶存重金属類のうち80~100%を除去し得ることが判明した。 本研究室では,このような天然の浄化作用を応用した周辺環境と調和した安価な水質浄化法の開発に向けた基礎研究を実施している。