河村 正二教授
大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻
SDGs
連携提案
ヒトを含む霊長類を中心に、感覚センサーの遺伝子実体が知られている色覚(opsin)、嗅覚(olfactory receptor: OR)、旨味・甘味(TAS1R)、苦味(TAS2R)の多様性と適応進化の解明に取り組んでいる。具体的には次の研究プロジェクトがある。
1.ヒトを含む霊長類のケミカルセンサー遺伝子群の多様性と適応進化
2.ヒトの色覚多様性の起源と進化学的成因
3.中南米の野生霊長類をモデルとした感覚の進化生態学
4.魚類をモデルとした色覚opsinの進化多様性と発現調節メカニズム
これらの研究に関心のある企業・団体へのコンサルテーション等が可能である。
事業化プロポーザル
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野生霊長類の感覚関連遺伝子集団内多様性の探索による生物多様性解明への貢献近年色覚や様々な化学物質感覚センサーの遺伝子が同定されている。色覚と化学物質感覚センサーが相互にどのような適応的意義をもつのかを理解することはヒトを含めた霊長類の進化を理解する上で極めて重要である。そのためには野生の集団中でこれらの遺伝子がどのような多様性を持つかを調査することで自然選択を検出する方法が極めて有効である。本研究では色覚の様相の異なる様々な種の霊長類の野生集団を対象に、色覚、嗅覚、フェロモン知覚、味覚の受容体遺伝子及びゲノム中の中立対照領域の塩基配列多型性を調査し、自然選択の予測された遺伝子に対し機能解析を行ない、野生行動との関連を検討することで、霊長類感覚系の適応進化に対する理解を特段に深める。得られた成果は霊長類全体の感覚進化の理解を大きく進めるだけでなくヒトの色覚変異をはじめとする感覚多様性についても新たな視点を与えると予想される。 種内変異は環境適応への源泉であり現在進行形の進化の反映である。モデル生物は決して生物全体を代表せず、1個体のゲノム情報は決して種を代表しないことが一般に認知され始め、時代は多様性の探索とその意味付けという生物学本来の重要な側面に立ち戻りつつある。中でもヒトに近縁な野生霊長類の遺伝的多様性の理解は進化学の重要なテーマでありヒトの進化を理解する上でも極めて重要である。また野生状態の多様性の実態を明らかにすることは環境と絶滅危惧動物種の保全といった極めて今日的で切迫した問題への指針を与えることができる。
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世界はヒトが知っている以上に多彩である~環境に適応した多様な色彩知覚メカニズムに関するコンサルティング~異なる波長の光を違うと感じる感覚(色覚)は動物により大きく異なっている。同じ虹を見ても4色型色覚の鳥なら3色型色覚のヒトよりずっと多くの色を見ることができるだろう。近年の研究の結果、さまざまな動物において色覚を担う視物質の解明が進み、動物によりその数や種類が異なることがわかってきた。例えば、魚類のゼブラフィッシュは高度な4色型色覚を持つだけでなく、網膜の領域により視物質構成を違えることで、視線の方向によって色覚を違えており、3色型の人類よりはるかに微妙な色調を認識できると考えられる。これを実現するための視物質遺伝子の制御メカニズムもわかってきた。また、中南米に生息する新世界ザルには1つの種内に6種類の異なる色覚型が存在するものが知られており、生息環境と獲得色覚との密接な関連もわかってきている。