石原 俊時教授
大学院経済学研究科 経済専攻
SDGs
連携提案
スウェーデンの近代化・工業化の特質を明らかにし,それと関連させて福祉国家の生成展開過程を分析することに努めてきた。福祉国家の生成過程については,特に国家と社会の相互関係という視角から,公的統計制度,民間の慈善と公的救貧,戦間期以降の福祉国家の展開過程については,高齢者福祉,労使関係といったトピックを中心に実証的研究を進めた。
蓄積された研究成果・知見を基に、本研究に関心のある企業・団体へのコンサルテーション等が可能である。
事業化プロポーザル
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企業におけるスウェーデン・モデルスウェーデンでは、戦間期以来、労使協調の下で、直面する職場の様々な問題を解決すると共に、生産性を向上させる取り組みが積み重ねられてきた。例えば、テイラー主義的労務管理の導入、労働環境の改善、女性労働力の進出への対応、外国人労働者の受け入れや職場での適応などである。昇進や配置転換のルールについても、労使協議の下で定められた例もある。こうした労使協力の伝統は、福祉国家の発展を経済的・社会的に支える重要な要因であったと考えられる。また、ボルボのカルマル工場におけるベルト・コンベアの廃棄に代表される、国際的に有名なスウェーデンにおける「労働の人間化」の試みも、こうした伝統抜きにはなされなかったであろう。さらに、スウェーデン企業が、石油危機や、1990年代初頭のスウェーデン版バブルの崩壊、ヨーロッパ統合やグローバリゼーションといった一連の荒波に立ち向かう際にも、このような伝統が拠り所となった。 このテーマの提案者である石原教授は、経済史を専門とし、ボルボを主な対象としてスウェーデンにおける労使関係の歴史的展開について研究を進めている。これまでの成果としては、「企業から見たスウェーデン・モデル(1)-(4)」(東京大学『経済学論集』第74巻第3・4号、第75巻第1・2号)がある。グローバリゼーションの中で生き残るためには、それぞれの国は、自己の経験や特質を活かした方向性が求められると思われる。
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スウェーデン福祉社会に学ぶ近年、我が国でも少子高齢化、年金、医療、介護など社会福祉の問題をめぐり議論が盛んに繰り広げられている。これらの問題を論ずるにあたって、福祉先進国であるスウェーデンがモデル国家として取り上げられることも多い。その場合、スウェーデンでは、国家のみでなく、様々な自発的団体、地方自治体、企業なども福祉の供給主体として歴史的に大きな役割を果たしてきたのであり、現在、福祉国家の危機が叫ばれる中で、新たな役割を担いつつあることに注目すべきであると思われる。また、スウェーデンの現状は、一朝一夕にして得られたわけではなく歴史上様々な問題に直面し、それらを克服しながら獲得してきたものであり、現在も新たな問題が生じていることを知る必要があるであろう。 このテーマの提案者であり、経済史が専門の石原教授は、スウェーデン福祉国家がどのように形成されてきたのかについて研究を進めてきた。『スウェーデンの高齢者福祉―過去・現在・未来―』(新評論)の訳者でもある。日本でも、今後の福祉のあり方を考える上で、国家に留まらない多様な福祉供給主体とそれらの相互協力関係を視野に収め、さらに進展する社会福祉ニーズの多様化に対応し、民間や個人レベルの自発的参加意識を高めることを考えねばならないと思われる。