久保 啓太郎教授
大学院総合文化研究科 広域科学専攻
SDGs
連携提案
スポーツ科学および健康科学分野において、研究対象としてあまり注目されてこなかった「腱」の機能的役割や可塑性を通じて、新たな視点からスポーツパフォーマンス向上や健康増進を図ることを目指している。現在進めている研究テーマは以下のとおり。
1)筋および腱の力学的特性(いわゆるバネ)の機能的役割
2)筋および腱の力学的特性(いわゆるバネ)の可塑性
3)腱の障害予防
4)ヒト生体の筋および腱に関する新たな測定法の開発
これらの研究の応用・実装に関心を持つ企業・団体との連携が可能である。
事業化プロポーザル
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ヒト腱の代謝的因子の変化に基づいた腱障害に対する治療法の確立この研究室では、ヒト生体における腱の代謝的因子(血液循環やコラーゲン代謝など)の測定法の確立、およびスポーツ現場や医療現場等への応用を目指した研究を展開している。これまでヒト腱の血液循環やコラーゲン代謝は、水素クリアランス法やMicrodialysis法などで測定されてきたが(e.g., Langberg et al. 1999 J Physiol)、それらは侵襲的であったり、被ばくを伴うなどの問題点があり、スポーツ科学や健康科学の分野で応用するには困難であった。最近、赤色分光法を用いることで、ヒト生体の腱の血液循環が非侵襲的にとらえられるようになった(e.g., Kubo et al. 2008 Acta Physiol)。さらに、骨粗鬆症などの骨のコラーゲン代謝マーカとして用いられてきた幾つかの血中マーカの動態を総合的に検討することで、ヒト生体の腱のコラーゲン代謝を推定することにも成功した(Kubo et al. 2012 Res Quart; Kubo et al. 2012 Eur J Appl Physiol)。
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腱を考慮に入れた新たなトレーニング法の開発この研究室では、ヒト生体を対象として『腱の可塑性と役割』について研究をすすめている。腱は単なる筋と骨の連結組織ではなく、その力学的特性(粘弾性)が筋機能やスポーツパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことが少しずつ分かってきた(e.g., Kubo et al. 1999 J Appl Physiol)。例えば、陸上短距離種目(100M)におけるパフォーマンス(走タイム)が優れる者ほど、膝伸筋群の腱ステイッフネスが低い(腱が伸びやすい)ことが明らかになっている(Kubo et al. 2000 Acta Physiol Scand; Stafilidis & Arampatzis 2007 J Sports Sci)。さらに、トレーニング様式の違い(負荷の大きさ、収縮時間、筋収縮様式、など)が、筋機能や筋量だけでなく、腱の力学的特性(ステイッフネス、ヤング率、ヒステリシス、など)に対して異なる効果をもたらされることが明らかにされつつある(e.g., Kubo et al. 2001 J Physiol; Kubo et al. 2007 Med Sci Sports Exer)。これらの知見は、パフォーマンス向上を目指す競技選手のトレーニングプログラムを立案する際に、腱の力学的特性に対する影響を考慮する必要性を示唆するものである。