東原 和成教授
大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻
SDGs
連携提案
人間社会では嗅覚は五感のなかでなくてもいい感覚として位置づけられていますが、実は、多くの生物では、匂いやフェロモンといった化学物質の情報を介して、食物の認知、個体の認識、生殖活動の誘発など生存に不可欠な行動や習性が制御されています。私達は、分子生物学、神経科学、細胞生理学、生化学など、領域横断的な考え方と技術を駆使して、匂いやフェロモンの嗅覚感覚の仕組みを、末梢の受容体から高次脳まで、分子レベル、細胞レベル、個体レベルで解明しようとしています。そして、種内あるいは種をこえた生物間におけるコミュニケーションの手段としての化学受容のメカニズムを明らかにし、いかにして、外界からのシグナルを生物が受容・認知し、行動・本能が制御されているかに迫りたいと思っています。
私達の嗅覚基礎研究は、おいしさを追求する食品科学への応用、そして、臨床における嗅診や、社会の安心・安全のための嗅覚センサーの開発にもつながる、実用的な側面をたくさん備えています。社会から失われつつある「におい」の風景を大事にし、厳密に設計された嗅覚空間を構築することはポストゲノム時代の感性科学のひとつであると考えています。人と人とのコミュニケーションの必要性を再認識し、食生活を豊かにすることを目標に、人類の幸せにつながるような新しい嗅覚の利用法を模索していきたいと思っており、研究成果の応用に関心のある企業との連携を希望します。