超広域2光子顕微鏡と広域高解像度蛍光顕微鏡の開発
松崎 政紀大学院医学系研究科 機能生物学専攻
私たちの感覚、認知、記憶、運動などの機能は、脳の複数の領野の個々の神経細胞が相互に情報をやり取りし、神経細胞間のつなぎ目であるシナプスでの情報伝達効率が変化することで実現している。この脳内情報処理機構を理解するためには、哺乳動物モデルであるマウスの複数領野の神経活動を大規模かつ同時に測定することが不可欠で、かつ単一細胞・単一シナプスレベルでの空間解像度を持つことが望ましいが、これは現在広く市販されている蛍光顕微鏡では実現が難しい。 そこで本研究室では、複数領野の活動をイメージングするための、顕微鏡対物レンズ直下に視野を移動させる機能を持った小型光学装置(図1)を挿入する顕微鏡、「超視野2光子顕微鏡」(特許出願2015-184497)、広域シナプス活動を高速イメージング(1 mm視野、0.21 μmピクセルサイズ、60 fps)するための、8Kスーパーハイビジョンカメラとスピニングディスク共焦点顕微鏡を組み合わせた顕微鏡、「8Kスピニングディスク共焦点顕微鏡」を開発した。特に前者は、既存の顕微鏡への小型光学装置の挿入によって実現でき、最長6.4 mm離れた視野の連続イメージングが可能(図2)で、高速化などさらなる改良が見込まれる。