小林 徹也教授
生産技術研究所 情報・エレクトロニクス系部門
SDGs
連携提案
我々の研究室では、生体システムの情報処理を理解・予測・制御するための数理的・情報学的な手法の構築を行っています。
生命現象としては、細胞内反応システム、細胞の代謝・自己複製、生体の探索行動、免疫系、発生現象、嗅覚系などに取り組み、数理理論の構築とともにイメージングやシーケンスなどの定量的・網羅的なデータを活用したデータ解析やその手法開発も行っています。
特に発生や免疫、嗅覚、細胞代謝と自己複製などの問題は、着床前胚の培養条件の定量的な評価、免疫記憶の解読による過去の感染履歴や将来の感染リスク評価、様々な匂いの多元的評価と新たな匂いのデザイン、そして細胞やガンの薬剤耐性に対する適切な制御方法の構築などにつながります。
一方で生体は複雑かつ不確定な環境の中で、様々な情報を集め処理し、適応的な振る舞いを実現する高度な情報処理システムです。そのメカニズムは未だ道な部分が多く、その原理の解明は生物学だけではなく、新たな工学・情報学的な技術の種にもなります。その中でも嗅覚系は、画像情報を扱う視覚、音声・音波情報を扱う聴覚に対し、未だ情報学的な開拓が不十分な化学物質情報を扱う感覚系です。これらの研究から、化学物質などを対象とした新たな機械学習などの手法の開発につながることが期待されます。
事業化プロポーザル
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次世代シーケンスに基づく免疫多様体の解析技術免疫系は多様な外敵を認識・排除し我々の体を守るシステムである。多様な外敵を認識しうるメカニズムは獲得免疫を担うT細胞・B細胞の受容体が有する多様体(受容体レパトア)に帰着される。この受容体多様性を次世代シーケンスによって解読することは、我々の免疫状態やその変化を定量することにつながる。 この研究室は次世代シーケンサーによって得られた受容体レパトアの解析技術の開発を行っている。特に、可能な免疫受容体の多様性に対して、大幅に制限されて観測されるシーケンスデータ数が極めて少ないことに着目し、低次元化に基づくデータ表現探索、および受容体多様性に背後に働く受容体選択や増幅の動態を考慮した解析技術の開発に取り組んでいる。
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哺乳類胚の3Dイメージングデータを対象とした自動画像解析・定量データ解析近年の蛍光タンパク質技術・顕微鏡技術の発展に伴い、分子・細胞・発生・神経・免疫などの様々な現象をバイオイメージングデータが創薬・再生科学・免疫学・脳神経科学の実験現場で加速的に生産されつつある。日本は蛍光タンパク開発および顕微鏡技術の開発において産学ともに世界をリードする研究を行ってきているが、そこから得られるデータの活用については世界の後塵を拝している。 本研究室ではイメージングデータを対象とした画像解析およびそこからえられる定量データの統計的解析技術開発を、特に哺乳類胚を対象とした3Dデータを用いて進めている。具体的には、狭小点顕微鏡で経時的に計測された初期胚の核の3D画像から自動でその位置関係を同定し、その後手動での確認・補正を経て、自動にて発生中の分裂や移動を追跡するシステムを構築している。