阿部 郁朗教授
大学院薬学系研究科 薬科学専攻
SDGs
連携提案
有機化学を基盤とした、生命現象の解明とその人為的な制御に関する研究は、ポストゲノムの時代にあって、今後ますます飛躍的な発展が期待される。一方、今後の医薬資源の開発について考えた場合、多様性に富む化合物群をいかに効率良く生産し、創薬シードとして提供できるか、が鍵になる。この研究室では、上記研究課題を中心に、今後の医薬資源研究をリードする、ケミカルバイオロジー領域の研究に日夜挑戦している。
現在以下のような研究課題に取り組んでいる。
1.天然物生合成(遺伝子探索、機構解析、生合成工学、合成生物学)
2.二次代謝酵素(反応機構解明、構造機能解析、触媒機能改変)
3.生物活性物質の探索と単離構造決定
研究成果の応用・実用化に関心のある企業との連携を希望する。
事業化プロポーザル
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生合成酵素遺伝子利用した有用天然物の生産天然物は極めて構造多様性に富んでおり、医薬品をはじめ食品や食品添加物などに利用される成分が多く存在する。本研究室では、これらの天然物のなかでもポリケタイドやトリテルペノイドについて、骨格の生成に関与する酵素の遺伝子を多数取得し、生成物特異性の制御機構についての基礎研究を展開してきた。そして、骨格形成以降の反応である修飾反応を触媒する酵素群に研究対象を拡大し、それら遺伝子のクローニングに成功した。これらの酵素遺伝子を大腸菌、酵母、糸状菌などの異種生物に導入し、共発現させることにより、有用物質の大量生産が可能であり、企業からの共同研究の提案を歓迎する。
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糸状菌由来ポリケタイド合成酵素のドメインスワッピングによる物質生産糸状菌由来ポリケタイドは、構造多様性を有し、高脂血症治療薬であるlovastatin、免疫抑制剤であるcyclosporin等の医学的に重要な化合物群を含む。ほとんどの糸状菌ポリケタイドは、触媒ドメインが一本のポリペプチド鎖に連なって存在するモジュール型の酵素によって合成される。触媒ドメインには、ポリケタイドの伸長回数を制御するketosynthase (KS)、環化様式を制御するproduct template(PT)ドメインが含まれる。近年、糸状菌由来PKSの反応の解析例が増加したこと、ドメイン間のリンカー部位のアミノ酸の予想プログラムの発達により、ドメインスワッピングが可能となりつつある。本研究では、縮合回数の異なるKSドメインと環化様式の異なるPTを組み合わせたキメラ酵素を糸状菌、酵母にて発現することにで、新規な糸状菌ポリケタイドの生成を試みる。