古田 一雄教授
大学院工学系研究科 附属レジリエンス工学研究センター
SDGs
連携提案
人や組織の振舞いを考慮したレジリエントなシステム設計を目指し、以下のような研究に取り組んでいる。
1.対話型サービスシステム設計
ヒューマンモデルに基づいてサービスシステムの振舞いをシミュレーションし、結果を可視化することによって、現場の専門家に積極的にデザインに関与してもらう人間中心の対話型サービスデザイン手法を開発している。現場から行動規範を抽出するエスノグラフィックな手法と、エージェントベースシミュレーションを組合せたデザインプロセスを用いて、レジリエントなサービスシステムの実現を目指している。
2.都市重要インフラのレジリエンス
電力、水道、交通、通信などのライフラインや物流、金融、医療などのサービスは現代人の生活にとって必要不可欠な重要インフラである。ネットワーク分析、エージェントベースシミュレーションなどの手法を用いて、こうした都市重要インフラが災害や環境変化に晒された場合の応答を評価する手法を開発し、都市重要インフラのレジリエンスを高めるための研究を行っている。
3.社会デザイン
エージェントベースモデルなどの構成的モデルや進化計算に基づくシミュレーションによって、大規模複雑な技術社会システムの合理的な設計を行なう技術の確立を目指している。
これらの研究に関心を持つ企業・公共機関等等との連携を希望する。
事業化プロポーザル
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シミュレーション技術によるシステムレジリエンス評価技術これまで、確率論的リスク概念に基づくリスクマネジメントが、技術社会システムの安全性向上に大きく貢献してきた。しかし、リーマンショックや東日本大震災を経験した今日、さまざまな部門でリスクマネジメントに関する新しい考え方が求められていると言っても過言でない。 このような背景からレジリエンスという概念が注目を集めている。レジリエンスとは、外乱やシステム内部の変動がシステムの全体機能に与える影響を吸収し、状態を平常に保つシステムの能力、あるいは、想定を超えるような外乱が加わった場合であっても機能を大きく損なわない、損なったとしても早期に機能回復できるシステムの能力を意味する。レジリエンスの概念は、従来の静的なリスクマネジメントを拡張、補強し、リスクマネジメントが十分だったとしてもなお残ってしまう残余のリスクに対処するための有効なアプローチを提供するものと期待される。そこで、レジリエントなシステム実現のための学理と方法論に関するレジリエンス工学の研究が、社会からの要請に応える意味で必要である。 この研究室では、人工物のみならず人間や組織の振舞いまでも含む先端的なシミュレーション技術を活用し、巨大で複雑な技術社会システムのレジリエンスを評価し、レジリエンスを工学的に造り込むための研究を行っている。たとえば、首都圏の複合重要インフラシステムの大規模災害に対する脆弱性評価と安全保障政策の研究である。
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ヒューマンシステム・シミュレーションこの研究室では、個人、集団、社会のさまざまなレベルにおける人間の認知行動をモデル化し、コンピュータシミュレーションを行うことによって、人間を含む工学システム、社会システム、経済システムなどの評価とデザインを行う技術を開発している。これは認知心理学的知見のみならず、現実環境における人間行動を観察、分析することによって得られる「現場の知識」を反映した人間行動のモデリングを行うものであり、この技術を、プロセスプラントの運転制御室、航空管制・航空機運用プラン、地域防災計画、安全規制や不良品回収などの社会制度など、広範なシステムを対象とする設計評価に適用し、有効性を確認している。 キーワード:シミュレーション/ヒューマンモデリング/プロセスプラント/航空管制/航空機運用/防災/制度設計/社会デザイン
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サービス共創人間のチームが協調することによって高度なサービスを提供したり、新たなアイデアを提案したりすることが、イノベーションにとって重要となっている。そこでこの研究室では、チームの協調行動についての基本原理を解明するとともに、円滑な協調やアイデア創出を支援する技術について研究している。チーム協調の基本原理については相互信念モデルを提案して、チーム・パフォーマンスの評価手法やチーム協調を促進する訓練手法などを開発し、航空管制、プラント運転などの業務に適用した。また、チームによる合意形成を支援する技術として、参加者の立場を可視化しながら議論を進める機能や、会議録の自動要約機能を備えた電子会議システムなどを開発した。 キーワード:チーム協調/チーム・パフォーマンス/合意形成/電子会議
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防災シミュレーション自然災害や設備災害などの被害を最小にとどめるためには、政府、自治体、警察、消防、住民など多くの関係主体との円滑なコミュニケーションと連携を可能にする平時における防災体制の整備と防災訓練が不可欠である。この研究室では防災体制を効率よく構築するための防災組織、体制のシミュレーションの研究を行っている。災害事象の物理現象ばかりでなく緊急時における人間・組織の行動を予測・評価し、緊急時防災の社会制度を設計するため分散マルチエージェント・シミュレーション技術を用いた緊急時人間行動シミュレータを開発している。 キーワード:危機管理/災害対策/防災体制/組織活動/マルチエージェント・シミュレーション