新藤 浩伸准教授
大学院教育学研究科 総合教育科学専攻
SDGs
連携提案
専門分野は生涯学習論。人間の生涯にわたる成長・発達における多様な学びの意味を、表現・文化活動、芸術活動を中心に研究している。さらにそのための環境をどう支援し創造していくか、イギリスなどとの比較も視野に入れつつ、日本の公共ホールや博物館などの文化施設、教育・文化政策、文化産業の歴史に即して調査している。人が暮らしの中で楽しみ、学び、変わり続けることで創造されていく社会や文化の形を、フィールドの中で恊働的に、また歴史的にも探求したいと考えている。
具体的には事業化プロポーザルのような活動を行っており、地方自治体・地域企業等と協力・連携し、地域の文化活動、生涯学習の活性化への実践的な活動を展開したい。
事業化プロポーザル
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メディア・文化産業が人間形成に果たす役割マンガ、テレビ、ゲーム、インターネット等々、新しいメディアが出るたびに、俗悪文化として子どもから遠ざけようとするか、教育的に活用しようとするかという双方の力学を大人たちは働かせ、両者のいわば綱引きの中でメディアは社会に受け入れられてきた。 しかし、大人のそうした綱引きを尻目に、あるいはその綱引きをかいくぐるように、子どもたちは新しいメディアを楽しみ、その中で生きてきた。たとえばゲームで育った子どもたちは、ゲームの世界を通して言語や文化、道徳を学び、ヴァーチャル世界とひとくくりにできないある種のリアリティをもって受け止め、それを生きていくうえでの糧にしている部分も大きい。学校で学んだこととは質が違い、時代を共有する感覚の一部にもなっている。また、マンガを買ってもらったり、テレビをみたりゲームをしたりすることを許してくれた(あるいは許されなかった)家庭環境や、それを楽しんだ交友関係といった周辺の文脈、思い出も含めて、子どもたちの財産になっている。 一方大人は、子ども時代の経験を振り返り、噛み砕きながら新たなメディア経験を日常生活、職業生活に組み込み続けている。 功罪を論じることも重要かもしれないが、そうした人間とメディアの関係をまっすぐにとらえ、メディア・文化産業が人間形成に果たす役割を検証しながら、今後のメディアの可能性を探ることは、私たちの生活、メディア・文化産業のありかた双方に大きな可能性をもつのではないだろうか。
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劇場、公共ホールおよび公民館等を拠点にした舞台芸術および市民活動のアーカイブ化とその活用資料を有し、資料を活動の基盤にすえる点で共通する図書館、博物館、文書館の連携可能性が、近年「MLA」という枠組みで論じられている。一方、資料をもたない活動を基盤とする劇場や公共ホール、公民館なども、活動の蓄積により地域の歴史を刻む拠点となりうるはずなのに、資料の蓄積が重視されることはあまりないのが実態である。いいかえれば、アーカイブの思想が、資料を有する他の上記施設に比べて貧困であるという課題を有する。そうしたなかで、今後はこれらの施設において、アーカイブ活動をその機能の一つとして位置づけていくことが求められている。
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表現する人と場所の支援を通したコミュニティの活性化人が表現する行為とその場所のありかたに関心をもっている。コミュニティアートという言葉はここ数十年国際的に注目されているが、日本でも「アート」の文脈にとどまらない生活文化、地域の歴史文化を基盤にした着実な活動が行われている。日常生活のなかの私事的な活動としてあまり顧みられることはないかもしれないが、そうした活動こそ人が生きる上でかけがえのないことであり、社会の基本的な力にもなりうると考え、その支援の方策を探求している。 また、公共ホールや博物館といった地域の施設を一つの拠点に、それぞれの施設のもっている資源を活かしながら、かかわる人や地域をどう活性化させていくかについて探求している。既存の施設の活性化はもちろん重要だが、その基盤となる職員体制や財政状況等が厳しい環境におかれ、そこに働く専門職員もさまざまなストレスを感じながら、十分専門性を発揮できず、日々の業務に忙殺されている状況がある。学校の教員などに比べればこうした問題は論議になりにくいかもしれないが、地域の施設の活性化は、市民の熱意とそれをうけとめ励ます職員の努力あってこそ成り立つものである。そうした専門職員の悩みにも向き合いながら、施設とそこに集う人のありかたをともに考えていく協働関係の構築が必要と考えている。