鈴木 貴之大学院総合文化研究科 広域科学専攻
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この研究室では、哲学の観点から、心に関連する諸問題を中心に、常識的な世界観と科学的な世界観の関係、社会と科学技術の関係について研究しており、心の哲学、社会と科学技術の関係などについて関心のある教育機関、公的団体、企業などを対象に、講演・アドバイスが可能である。 研究の一環として、科学リテラシー向上にむけた社会連携活動も展開し、近著『100年の世界:SF映画から考えるテクノロジーと社会の未来』(化学同人、2018年)では、テクノロジーの進展がもたらす変化とそこで生じる諸問題についてわかりやすく論じている。本書の趣旨を以下に要約する。 テクノロジーの発展によって、我々の生活は日々変化している。100年前にはフィクションでしかなかったものが、いまでは日常の一部となっている。これから100年の間にテクノロジーはどのように進歩し、それによって我々の社会にはどのような変化が生じるだろうか。 テクノロジーの未来を予測することは困難だが、そこにはつぎのような意義がある。第1に、新しいテクノロジーは、我々の社会にこれまでない大きな変化をもたらすかも知れない。第2に、社会に生じる変化のなかには、実際に変化が生じてから対応するのでは手遅れなものがある。第3に、未来のテクノロジーについて考えることを通じて、現在のテクノロジーや現在の社会のあり方について、様々なことが明らかになる。 たとえばインターネットやスマートフォンなどの情報テクノロジーを例に考えてみよう。一方で、これらのテクノロジーは、手紙や電話といったこれまでの通信テクノロジーの延長にすぎないようにも見える。しかし他方で、新しい情報テクノロジーには、大規模なデータ分析を可能にすること、権力による監視を可能にすること、人間同士のコミュニケーションのあり方を変質させることなど、これまでの通信テクノロジーとは大きく異なる側面もある。これらの点を考慮すれば、新たな情報テクノロジーがわれわれの生活を単純によりよいものにしてくれるかどうかは、けっして明らかなことではない。人工知能やロボット、生命に関するテクノロジー、人間の能力を高めるテクノロジーなど、新たなテクノロジーの多くに関しても、事情は同じだろう。 テクノロジーの進歩は幸福をもたらすかという問いは、これからの社会のあり方を考えるうえできわめて重要な問いである。幸福とは何か、われわれにとって大切なものは何かという、より根本的で哲学的な問いに取り組むことは、この問いに答えるための重要な手がかりとなるだろう。
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