超臨界水を利用した金属酸化物ナノ粒子の合成
秋月 信大学院新領域創成科学研究科 環境システム学専攻
金属塩の水溶液を急速に超臨界状態にすると、金属塩の溶解度が急激に低下することで大きな過飽和度が与えられ、金属や金属酸化物のナノ粒子が生成する。この手法は超臨界水熱合成法と呼ばれ、粒径や分布を制御したナノ粒子を合成可能な技術として注目されている。 この研究室では、イオン伝導体や誘電体、光触媒などの分野で応用が期待される複合酸化物ナノ粒子の合成について検討を進めている。特にBaZrO3ナノ粒子の合成について、ミリ秒オーダーでBa欠陥の多い構造が形成した後、秒オーダーでBaが取り込まれるという粒子の詳細な生成機構を明らかにし、反応時間の制御でナノ粒子の物性に大きく寄与するBa欠陥量の制御が可能であることを見出している。また酸化セリウムナノ粒子の合成について、温度に応じた晶析過程の違いを適切に利用することで、粒径分布を大きくせずにサイズを制御できる可能性を見出している。このように、ナノ粒子の生成機構の解明とそれに基づいたナノ粒子の物性制御を得意としている。 また、超臨界水中ではナノ粒子と有機修飾剤が共存する場合、粒子表面をその場で修飾したナノ粒子の合成が可能である。このような有機修飾を行うことで、ポリマーへの良分散性を獲得することや、ドラッグデリバリーなどに利用することが可能となる。この研究室では、有機ケイ素化合物による表面修飾銅ナノ粒子・表面修飾酸化鉄ナノ粒子の合成が可能であることを見出しており、反応時間や修飾剤導入のタイミング等の制御による表面修飾量の制御を目指した検討を進めている。