土壌ガスのモニタリング 西村 拓大学院農学生命科学研究科 生物・環境工学専攻 土壌由来の温室効果ガスの発生量、動態は、連続測定データが少ない一方で、放出の時間的変動が非常に大きいということが近年わかってきた。ガス透過性樹脂を土中に埋設し、ターゲットとなるガスをセンシングできるセンサーを挿入することで、土壌中のガス濃度の連続測定が可能になる。
マイクロガスタービンの性能向上を目指した小型ウェーブロータの開発 岡本 光司大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 本研究室では、マイクロガスタービンの熱効率改善を目的として、ウェーブロータの研究開発に取り組んでいる。 ウェーブロータは、多数のチューブ(セル)を有したロータと、その両端に配置された給排気ダクトで構成されている(図1)。図中左側のダクトには高圧燃焼ガスと低圧空気が供給され、その圧力差によって衝撃波が発生し、チューブ内を往復伝播する。すると、衝撃波がピストンのような役割を果たし、低圧空気が圧縮され、右側のダクトに排出される。これを既存のガスタービンに追加することによって(図2)燃費を大幅に改善することができ、特にマイクロガスタービンの場合には、その改善効果が大きくなると期待されている。 このウェーブロータについて、特に出力10kW以下のマイクロガスタービンを念頭に置いたCFD解析や試作機の開発等を進めている。
光化学反応を利用した排煙脱硝技術 津江 光洋大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 NOxを含む大気中に水蒸気を加え紫外線を照射することにより、減圧下(5.34kPa)、常温下でNO、NO2の低減が可能であることを確認した。また反応動力学を用いた数値計算から常温、大気圧下においても同様の傾向があることを明らかにした。この技術はNOx含有ガスが滞留しているような場所(地下駐車場、バス停交通量の多いトンネル)においてNOxを処理する脱硝装置になどに応用されることが期待される。 図1の説明: 白三角は、実験から求められたNO濃度(FTIRにより計測)を、実線は、数値計算によるNO濃度の予測結果を表す。紫外線照射後、約15分経過すると最初に100ppm存在していた大気中のNOの濃度はゼロとなる。その途中でNO2濃度(黒三角)が若干増加する(NOがNO2に変換されるため)が、NOと同様に約15分後には濃度はゼロとなる。それらは最終的には硝酸(HNO3)として回収される。
二酸化炭素の地中隔離や石油・天然ガス開発時流体地中移動のモニタリング用ソフト開発 ~地中圧力変動を指標として流体地中分布をモニタリングする技術の応用~ 佐藤 光三大学院工学系研究科 附属エネルギー・資源フロンティアセンターエネルギー・資源システム学 この研究室では、温暖化ガスとしての二酸化炭素 (CO2) 排出抑制策として注目されている地中隔離の研究を進めている。CO2貯留に際しては、その地中分布、圧力状況、周辺環境への影響などをモニタリングする必要がある。そのために4次元地震探査法や坑井内物理検層などが用いられるが、より簡便かつ低コストな手法の開発が望まれている。地中圧力計を用いて地球潮汐現象に伴う圧力変化を経時的に測定し、新しく考案したアルゴリズムに基づいて外乱要因を排除すると、CO2高含有流体の分布をモニタリングすることが可能となり、物理検層結果と良く一致する結果が得られた。
窒素ガスからの触媒的シリルアミン合成 西林 仁昭大学院工学系研究科 応用化学専攻 温和な反応条件下での窒素固定法の開発は、化学者が達成すべき最も重要な研究課題の一つである。当研究室では次世代型窒素固定法の開発に関連して、安価な鉄系触媒を用いた常温常圧の窒素ガスからの触媒的シリルアミン合成の開発に成功した。生成物のシリルアミンは加水分解することにより容易にアンモニアへと変換できるアンモニア等価体である。モリブデン錯体に加えて、安価で入手容易な鉄錯体が適用可能なことも明らかにしている。
微生物機能を利用した、二酸化炭素の有効利用 石井 正治大学院農学生命科学研究科 応用生命工学専攻 独立栄養微生物は、二酸化炭素ガスから全ての菌体炭素構成成分を生合成できる。二酸化炭素ガス固定のためのエネルギーは、光または無機化学物質(水素、イオウ、鉄など)により供給されているが、ここでは無機化学物質をエネルギー源として生育する化学独立栄養微生物を対象とする。 この研究室では、水素をエネルギー源とする好熱性水素細菌を研究対象として、微生物の独立栄養的代謝に関する知見、知識を多く有している。そこで、独立栄養微生物を利用した二酸化炭素の有効利用、特に物質生産・物質変換を指向している企業と共に研究を進めることを通して、保有する知識等が有機的に活かされ、産業化に繋がることを希望している。
次世代型窒素固定法の開発 西林 仁昭大学院工学系研究科 応用化学専攻 アンモニアは現代生活においても医薬品、工業製品、化成肥料などを合成する上での一次原料として重要な化合物である。また、最近は、水素キャリアー及びエネルギーキャリアーとしても注目されている。しかしながら、現在、アンモニアの工業生産は約100年前に開発されたハーバー・ボッシュ法によって合成しており、高温・高圧という環境負荷型の反応条件が必須である。 当研究室では低炭素社会の実現に向け、省エネルギー型の新しい窒素固定法の開発に成功している。
立体ナノ構造ボトムアップ加工技術とその応用 米谷 玲皇大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 ナノメカニカル構造やフォトニック構造,バイオツールなどの作製を狙い、集束イオンビーム化学気相成長法(FIB-CVD)を活用した立体ナノ構造形成技術の研究開発を進めている。図1に示すようにsub100nm~数10μmの立体構造体をボトムアップ形成可能な技術である。原料ガス選択によりカーボン系,金属系など多様な材料で構造体の形成を行うことができる。これまでのところ、本技術のコアとなる描画技術やデバイス応用の基礎となる材料物性に関する研究を進めるとともに、微小部品操作のためのマニピュレータ作製や振動子センサ開発,単一細胞内小器官の操作計測のためのバイオツール作製などへの応用を行ってきた(図2)。
ゼオライトを用いた環境触媒システム構築 小倉 賢生産技術研究所 附属持続型材料エネルギーインテグレーション研究センター 自動車排ガス浄化触媒に代表されるように、貴金属を用いた環境浄化用触媒は典型的な代表例である。元素戦略的観点からも、貴金属の機能を把握し、代替となる素材により省貴金属触媒を達成することは望ましい。 この研究室では、ゼオライトなど多孔質材料の低濃度物質濃縮作用に着目し、そこに選択性が賦活された機能を触媒活性点と併存することで、貴金属代替触媒となりうることを示した。ゼオライトの中に一酸化窒素NOや炭化水素HCの吸着作用を示す金属イオンを交換担持すると、NO、HCを選択的に濃縮することが可能となり、その後エネルギー印加によって分解や酸化が容易に進行することを示した。通常酸化活性の高くない鉄イオンの酸化還元によって、ミクロ孔内に濃縮された炭化水素を二酸化炭素まで完全酸化させ放出させるスーパーHC改質型トラップ材や、銅ゼオライトを用いたマイクロ波加熱によるNO吸着分解という新しい触媒プロセスの提案に至った。 一方、アンモニアを還元剤としたNO選択還元については、自動車技術研究組合AICEでのプロジェクトによって、産産学学による新規ゼオライト触媒設計研究に従事している。
畜産廃棄物の再資源化における土壌汚染リスク 西村 拓大学院農学生命科学研究科 生物・環境工学専攻 畜産飼料中には亜鉛、銅が動物薬成分として、また栄養成分として多量に含まれており、畜産廃棄物中にも多く含まれる原因となっている。畜産廃棄物の農業用肥料としての再資源化が促進されているが、近い将来この亜鉛、銅が土壌汚染物質として問題となることが予想される。この研究室では、土壌中における肥料成分の蓄積状況や温暖化ガス発生を含めたその動態の解明に取り組んでおり、亜鉛、銅に関しても重点的に取り組んでいる。