均質多孔空間を用いたエネルギー回収システム構築
小倉 賢生産技術研究所 附属持続型材料エネルギーインテグレーション研究センター
均質ナノ多孔空間をもつ材料を触媒として利用しても、その構造特性をフルに活用できる触媒反応例(例えば,形状選択的反応)は実際にはほとんどみられないのが現状である。したがって、ゼオライトやメソポーラスシリカなど、均質ナノ空間を真の意味で活用するアプリケーションのアイディアが求められており、またその存在意義を深めるモチベーションが強く望まれている。 この研究室では、均質な空間に閉じ込められたエネルギー保有物質が均質なエネルギーを系に返還することが出来ることに注目し、均質ナノ空間閉じ込め材料による熱の出し入れを行う発想を得た。非常に幅の狭い温度域で熱の吸収・放出が可能な素材として、相変化物質と相転移温度が挙げられる。メソポーラスシリカの細孔内部に相変化物質を挿入し、吸熱・発熱挙動を熱測定を行い観察した。メソポーラスシリカ細孔内部で固液相変化が起こっていること、液相は界面張力により漏出しないこと、バルク体と比べると細孔壁との相互作用により回収できる熱が低下すること、繰り返し熱の吸収・放出が可能となることを発見した。このことは、多孔空間の表面で行うエネルギー変換と、多孔空間そのものを活用するエネルギー貯蔵とで役割を変化させ、利用可能なナノ多孔空間を構築することができることを示した例である。