血液サンプルを用いた統合失調症発症に関与する代謝異常の解明と治療薬開発
笠井 清登大学院医学系研究科 脳神経医学専攻
統合失調症は原因不明の精神疾患で、一般人口の中で約0.7%が発病し、好発年齢は思春期から成年期と人生早期に発症し、その後の人生に大きな影響を与え続ける。発症に関わる病態解明を目指すことで新たな治療薬開発につながることが期待できる。本研究室では2008年より統合失調症発症前後を対象とした遺伝子、末梢血血漿成分、MRI、NIRS、事象関連電位などの、マルチモダリティ計測を利用した縦断研究(IN-STEP研究, http://npsy.umin.jp/cp.html, 図1)を行っている。その中で、キャピラリー電気泳動質量分析法による血漿成分の解析により、初発統合失調症に特異的に変化している物質を見出した(図2)。現在は、代謝異常の発現時期や症状経過との関連をみる臨床研究と、代謝異常による神経系への影響を見る基礎研究を融合したトランスレーショナルリサーチが可能な研究環境を構築しつつあり、代謝異常を補完する臨床試験を実施している。