心身の健康問題・メンタルヘルス不調の予防対策に資するテクノロジー開発
滝沢 龍大学院教育学研究科 総合教育科学専攻
当研究室では、医学・心理学・教育学を組み合わせた「新しい生物・心理・社会的アプローチ」を用い、子どもから成人へ至る一生涯を通じた心身の健康・Well-beingの保持増進・疾病予防のメカニズムを目に見える形で実証的に明らかにし、家庭・学校・職場などの社会環境の現場における予防教育的介入の効果検証を目指している。 これまで医師として病気をもつ方々の診療にあたってきたが、「病院に来ようとする前に何かできなかったか」と考えさせられる日々であった。そこで、新しくできた当研究室では、一般に日常生活を送る人々に対して病気に至る前(未病)の段階で発症予防を目指すアプローチで、「病院に来ようとする前」にフォーカスして、目に見えないと思われてきたはずのその予兆を<見える化>するという全く新しい挑戦的な検討を行っている。 そのため、「簡便・小型・非侵襲性・移動可能性」を特徴とするテクノロジー(科学技術)を用いて、日常生活の中で心身の健康情報や生体情報の測定を行い、臨床(保健・医療・福祉)や学校・教育や産業・労働の【現場で役立つ客観的なバイオマーカー(生物学的指標)を開発】しようと試みている。将来的には、これらの中でいくつかが「一般健康診断」にまで取り入れられることを目指す。 例えば、脳機能(前頭葉機能)測定、心拍変動計や電子瞳孔計、唾液計測(内分泌・免疫・炎症指標など)への取り組みをすでに始めているが、大規模な実証的研究を進めるためには、さらなる協力体制や研究の加速が必要である。 こうした簡便なバイオマーカーやICT/IoT技術を用いることで、日常生活の健康情報や生体情報や心理行動情報を把握しやすくなってきており、さらにその情報を適切に本人へフィードバックすることで、認知行動療法に基づいた心理行動的介入も応用しながら、さらなる健康行動を促す予防教育的介入へ繋げていくことができると考えている。