企業におけるスウェーデン・モデル
石原 俊時大学院経済学研究科 経済専攻
スウェーデンでは、戦間期以来、労使協調の下で、直面する職場の様々な問題を解決すると共に、生産性を向上させる取り組みが積み重ねられてきた。例えば、テイラー主義的労務管理の導入、労働環境の改善、女性労働力の進出への対応、外国人労働者の受け入れや職場での適応などである。昇進や配置転換のルールについても、労使協議の下で定められた例もある。こうした労使協力の伝統は、福祉国家の発展を経済的・社会的に支える重要な要因であったと考えられる。また、ボルボのカルマル工場におけるベルト・コンベアの廃棄に代表される、国際的に有名なスウェーデンにおける「労働の人間化」の試みも、こうした伝統抜きにはなされなかったであろう。さらに、スウェーデン企業が、石油危機や、1990年代初頭のスウェーデン版バブルの崩壊、ヨーロッパ統合やグローバリゼーションといった一連の荒波に立ち向かう際にも、このような伝統が拠り所となった。 このテーマの提案者である石原教授は、経済史を専門とし、ボルボを主な対象としてスウェーデンにおける労使関係の歴史的展開について研究を進めている。これまでの成果としては、「企業から見たスウェーデン・モデル(1)-(4)」(東京大学『経済学論集』第74巻第3・4号、第75巻第1・2号)がある。グローバリゼーションの中で生き残るためには、それぞれの国は、自己の経験や特質を活かした方向性が求められると思われる。